まちなかに東屋を据える
石川県金沢市の駅前に位置する三角形状の狭小遊休地に東屋を設計した。元々この敷地には大型看板が設置されていたが、金沢市の景観条例の厳格化と看板の老朽化を受け、撤去が決定した。敷地の正面に本社を構える北陸ミサワホームが施主であり、看板撤去後の敷地活用について相談を受けたことが設計の契機となった。
駅前という立地上、周辺には飲食店が多いものの、夜営業が中心でランチの選択肢が少ないという状況があった。そこで、キッチンカーを呼び込める場として敷地を活用し、施主の福利厚生施設であると同時に、地域住民や通行者が気軽に立ち寄れる休憩スペースとして計画した。隣のコンビニで購入した食事を持ち込んで利用できるなど、周辺の都市生活に応答できる開放的な東屋として計画した。
建物は敷地形状に合わせたシンプルな三角平面と片流れ屋根で構成し、屋根材には金沢市産の杉を用いたCLTを採用した。施主はこれまでCLT技術を扱った経験がなく、本計画を中規模木造への挑戦に向けた実験的プロジェクトと位置付けた。構造計画では、屋根外周部に柱を落とし、CLTの運搬サイズに応じた割付を基本としつつ、スパンが大きくなる部分には厚みのあるCLTを用いた。検討を重ねる中で、厚みの変化が軒裏の陰影を生み出すデザインへと展開した。
東屋は歩道に隣接して建てられ、まるで歩道そのものに屋根がかかったかのように見える。私設の休憩スペースでありながら、街路樹に代わる植栽、基礎を活用したベンチ、雨水を利用したビオトープを設けることで、都市の歩道空間の魅力を拡張する試みにもなっている。
通常の不動産用途では扱いにくい狭小遊休地を、都市に開かれた私設ポケットパークとして活用することを目的とした計画であり、都市空間における余白の新たな可能性を提示することを考えた。
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