町家の骨と皮
富山県南砺市井波に建つ町家を、写真家とインテリアデザイナーの夫婦とその子どもが移り住む住宅として改修した。井波は木彫り職人の町として知られ、通りに面したミセで作業を行う姿が今も見られる。本建物もかつてはミセを構える典型的な町家であったが、度重なる改修により内部は居間へと変化していた。母屋の背後には土蔵があり、転用材で簡易的に造られた廊下棟が両者を繋いでいた。建物取得時、この廊下棟は解体予定であったが、施主の「作業場や展示スペース、店舗など、人が集まる場をつくりたい」という要望を聞き、廊下棟含めて活用することを提案した。
施主と話す中で、伝統的な通りに開く町家の構成よりも、内に開いた中庭を中心とする落ち着いた空間が施主の生活に適しそうだと感じた。そこで、中庭と母屋を分断していた水回りをミセノマ側へ移設し、LDK・作業場・展示スペースが中庭を囲む構成へと再編した。伝統的な町家の増改築の履歴を踏まえながら、中庭型住宅へと転化する計画である。
また、ヨーロッパの輸入家具を嗜好する施主は、国内外を旅行する中で体験してきた家具や内装、建築空間の記憶を通じ、改修後の建物に対する具体的な素材感や抽象的な納まりに関する明確なイメージを有していた。設計にあたっては、旅先で得られた断片的な空間体験の群像を、伝統的な町家の文脈にどのような作法で取り込むか、長く検討していた。町家改修に多く見られる軸組を露出させる明快な構成は採らず、既存構造をいかに可視化するか、また新たな抽象的仕上げとどのように均衡させるか。吉田五十八が数寄屋建築において指摘した「ウルササ」を面の分割で調整したことに思考を巡らせつつ、抽象的な白い壁や天井を直線的に通した納まり、古材に似せた着色ラワン合板による仕上げなどを状況に応じて選択した。
これらの判断は、新たな間取りや断熱性能の向上といった機能的要請に応答しながら、施主との対話を重ね、場所や部位ごとに複数の視点を積層するブリコラージュ的な設計プロセスとして進められた。
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